Staff Note
コウソクストレート
冬場の下地作りが良かったのか、4月に入って動きが変わりました 。成長を踏まえて攻めるタイミング、我慢するタイミングを見極めることを学びました。
ノーザンファーム空港C3
佐々木淳吏厩舎長
写真提供: @penguin66 via X(旧:Twitter)
コウソクストレートの最初の印象を教えてください。
コンパクトにまとまっているというか、コロンとしていて、幼さを残していましたね。毛ヅヤ、表情、筋肉の付き方、体のバランス…、どれをとってもザ・1歳馬という感じで、早くから行ける感じではなかったです。実際、成長を促しながら、じっくりと育成しました。
どのあたりで印象が変わってきましたか?
もともと走ることに対して凄く真面目な馬でしたが、16-16ぐらいまでは目立たなかったんです。ところが冬場に我慢して下地作りをしたのが良かったのか、4月に入って15-15を始めてから動きが変わりました。沈み込むような走りになったので、これなら当初の予定を早めて送り出せるかも、2歳の新馬を勝てるかも、という感触が出てきましたね。
実際に新馬、くるみ賞と2連勝。3歳春にはファルコンSを制しました。
正直、重賞を勝てる馬になるとは予想していませんでした。実は乗っている感触からすると、瞬発力よりも持続力に秀でたタイプだったので、ファルコンSは位置取りが後ろになった時点で厳しいかなと…。それだけに直線で伸びて差し切ったことには驚きましたし、改めて一生懸命な馬だなと思いました
写真提供: @neo_shigematy via Instagram
その後はレースを使うことなく、3歳秋に蹄葉炎で死んでしまいました。
成長曲線を見ても、ファルコンSがピークではなかったと思うし、まだまだ伸び代があったはずです。それだけに尚更、残念でしたね。
コウソクストレートから学んだことはありますか?
当時は駆け出しの厩舎長で、試行錯誤しながらやっている段階でした。そんな中、コウソクストレートを通して、馬の成長を踏まえて攻めるタイミング、我慢するタイミングを見極めることを学びましたね。もしも走ることに前向きだからといって、冬場に攻めていたら、ここまでいい成長を促すことができなかったかもしれません。冬場のベーストレーニングが先につながったことで、一つ引き出しを作ってもらえたと思っています。
写真提供: @stripe_seed via X(旧:Twitter)
多くの名馬に携われていますが、思い出の馬はいますか?
オウケンブルースリですね。自分が乗って、初めてGⅠを勝たせてもらった馬なんです。当時は入社2年目ぐらいで、右も左も分からない状況で乗っかっていただけなんですけど、菊花賞を勝った喜びとか、ジャパンCでハナ差2着に敗れる悔しさとか、いろいろな感情を味わうことができました。この馬がいなかったら、今ほど仕事に対して真摯に向き合っていなかったと思いますし、この馬のおかげで今の自分があると言っても過言ではないですね。一生忘れることはない、大事な馬です。
産駒も手掛けられましたか。
オウケンブルースリはオウケンムーン、ジャズブルースと2頭のオープン馬を送り出していますが、どちらも僕の厩舎にいたんです。それもまた運命的ですよね。オウケンムーンが勝った共同通信杯は感無量というか、これぞ競馬の醍醐味というか。数少ない産駒の1頭が僕の厩舎に来て、父と同じオーナーで重賞を勝つというのは感慨深かったです。
写真提供: @mitsuostagram via Instagram
最後にレイクの生産馬に対する印象を聞かせてください。
(ナチュラルホースマンシップの第一人者である)持田裕之さんを招いて講習を受けているということですし、実際に馴致とか、馬に対するアプローチはきめ細やかにやってもらっていると感じます。しっかり触られているので、育成開始後も気になることはないですよ。コウソクストレートは夢半ばで天国に旅立ってしまいましたから、その悔しさを晴らすためにも、レイクの生産馬で大きなレースを勝ちたいですね。
コウソクストレート